Project Story
プロジェクトストーリー

パークシティ柏の葉キャンパス


世界の未来像をつくる街。
その主役となるキャストを募る仕事。

Profile

吉崎 典孝

千葉支店 開発室長/1995年入社
(※所属部署等、内容は取材当時のものです)

環境、健康、創造、交流をテーマに約273haにおよぶ街づくりを推進
つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅の周辺エリア(千葉県柏市)では、「柏の葉キャンパスタウン構想」に基づき、公・民・学の連携による新しい街づくりが進められている。三井不動産グループは「民」としてこの街づくりに参画し、「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」という3つの課題解決を追求する「スマートシティ」の実現のための取り組みを進めてきている。今回、紹介する「パークシティ柏の葉キャンパス」プロジェクトは、この街の賑わいや交流の主役となる人々の、日々のくらしを支える住空間の創造を担うものである。長年にわたりこのプロジェクト推進に携わってきた先人たちの想いを受け止め、現在、このプロジェクトを主導する一人、吉崎 典孝に話を聞いた。

Prologue 新たな街の主役となる人々を呼び込むプロジェクト

三井不動産グループと柏の葉の地との関わりには、長い歴史がある。古くは、江戸幕府の軍馬を養生する放牧場だったこの地に、明治2年、政府に協力して三井八郎右衛門(高福)が開墾会社を設立したことからはじまる。昭和36年には、その後、長く名門クラブとして愛されることになる「柏ゴルフ倶楽部」を開設。やがて常磐新線(現在のつくばエクスプレス)の整備が都市交通対策上の喫緊の課題として議論されるようになる。この路線がゴルフ場を二分するように計画されたことから、ゴルフ場は閉鎖を余儀なくされたが、三井不動産グループは、地権者の一人として新しい街づくりに積極的に関与していくことになる。そして、つくばエクスプレス開業の翌年(2006年)には、「三井ショッピングパーク・ららぽーと柏の葉」を開業。同年11月には、「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」の販売を始動している。ゴルフ場の閉鎖(2001年)から5年の歳月を経て、新たな街に人々の活気と賑わいを呼び込むプロジェクトが、いよいよ動き出すことになった。

Episode.1 プロジェクトを主導し、事業を動かしていく

吉崎の千葉支店への異動が決まったのは、2011年3月11日。辞令を受けてわずか数時間後に、それまで経験したことのない大きな揺れを感じた。東日本大震災が東北地方から関東地方の沿岸部に甚大な被害をもたらす。赴任先の千葉支店が担当するエリア内でも、日常生活を揺るがすような問題も多発した。吉崎は赴任早々これら諸問題への対応のため、通常の開発業務とは異なる仕事に追われる日々を過ごしたという。
「私が千葉支店に異動となった2011年3月は『パークシティ柏の葉キャンパス二番街』の販売が軌道に乗ってきた直後のことで、引き渡しの前に再度、各住戸の品質を確認するための検査を行い、必要な補修を手配するなどの業務に忙殺される日々でした。また、すでに入居されているお客様もいらっしゃいましたので、そうした住民の方々の不安を解消するための対応にも時間を費やしました。一方、すでにスタートしていた販売活動への影響を最小限にとどめ、立て直しを図るために腐心しました。開発担当は単に商品を企画するだけではなく、事業全体に目を配り、自分たちが主導して事業を動かしていく。そういうマインドを大切にしなければならないのだということを、改めて思い知らされた日々でもありました」
こうして吉崎たちプロジェクトメンバー全員の努力の甲斐あって、「パークシティ柏の葉キャンパス二番街」は、その販売体制を立て直し、2012年9月からは、全6棟880戸のうち、最もボリュームのある二つのタワー棟(464戸)の販売をスタートさせることになった。

Episode.2 ひとつ先を視野に入れ、計画する

「パークシティ柏の葉キャンパス二番街」は、「柏の葉キャンパス」駅の北西方向に位置し、駅から一直線に延びる軸線が、二番街の真ん中を通り抜けている。この軸線は「グリーンアクシス」と呼んでいる緑のメインストリートで、空間が北西方向へと抜けていくランドスケープとなっている。そして、この動線計画には重要な意味があるのだと、吉崎は言う。
「現状では、このメインストリートを抜けた先には原野が広がっていて、そこは街のはずれのように見えてしまいます。しかし開発担当者たちは、この二番街の土地を街の中心部だと考えてきました。それは、その先の後背地の開発を視野に入れていたからです。柏の葉の街づくりは、10年先、20年先にも開発が進んでいく壮大なプロジェクトです。目の前の与えられた土地だけを考えるのではなく、その先の開発を考えて、後背地の価値を高めるための一手を、いまの段階から打っておく。そういうことが大切なのだと考えています」
この「グリーンアクシス」を取り囲むように、ワークショップルーム、ライブラリ、パーティルームなどの多彩な共用施設群を配置し、それらの施設を利用する居住者同士の交流を促すとともに、外部からこの街を訪れる方々にも寛容な「開かれた街」を築こうとしたのだという。
「街の中心である二番街に住まわれる方々と、柏の葉の街づくりを進めていく私たちとが、他人の関係になっては、この街全体の開発は立ち行かなくなってしまうでしょう。単なる開発業者と購入者という関係を超えて、ともに街づくりを推し進めていく『ご近所さん』として、末長い交流が必要なのだと感じています」

Episode.3 お客様の幸せを第一にプランニング

そして現在、吉崎が注力しているのは二番街の次のパークシティを完成へと導くことだ。前任の担当によって計画の大枠は進められていたが、その敷かれたレールに乗って、竣工、引渡しへと向かえるほど、現実は甘くはない。様々な問題が浮上してくる。一番は、建築コストの高騰、工事現場の人手不足の問題だった。工事費が当初の計画段階よりも高騰し、どのように事業を成り立たせ、この物件を世に送り出すのかを再検討せざるを得なかった。もちろん、お客様にご負担をかけるわけにはいかない。お客様はこの後何年もこの街に住み続けますし、長く住んでいただきたい。どんなに厳しい状況のなかでも、お客様にとって何が幸せなのかを考えて、最適なものを供給していくことが、開発担当としての吉崎のプライドだ。
「開発者という立場の前に、引き継ぐ前のお客様代表としての立場を忘れずにいることを心がけているのです」

次のパークシティは、2棟の高層タワーによって構成される。駅前のビル街を抜けると緑が立ち上がり、子供たちが遊べる噴水を設置した水の潤いを感じさせるオアシスとなる。そこにそびえ立つ2本のタワー。エントランスは一歩控えた設えとして、セキュリティにも配慮している。そして、その先の二番街へと連なる一体感のある街並みが、この街にくらすことの意味を、雄弁に物語ってくれるはずだ。

Epilogue 次の世代に、語り継ぐべきこと

「一番街の担当者や前任者からの引き継ぎも、何年もの時間をかけて物件に込めてきたものを全て引き継ぐのは実務的に難しいです。でも、やっていると分かるんですよ。自分で過去を振り返って、前任者たちが何をこの街に残してきたかが…」
柏の葉における街づくりのように長期におよぶプロジェクトでは、10年、20年、30年と、担当者が何代にもわたって入れ替わりながら、事業を引き継いでいく。吉崎は、そのことによって柏の葉の街づくりが、その時々の時代の要請を反映したものへと成熟していくのだと考えているという。
「担当が変わるのは大切なことで、一人の人間があまり長い間関わってはいけないと思います。次々と新しい人が入ってきて、それぞれの視点で過去を振り返り、先人たちの想いを共有しながら、将来を見つめる。前任者の考えに固執し過ぎてはいけないし、新しいものを生み出していかなければならない。時には思い切った方向転換をする勇気が必要だと思うんです」

やがて吉崎も、次の世代へと事業を引き継ぐときが来る。そのときに吉崎は、後輩たちに対して、多くを語ることはないだろうと言う。次々と、新しい発想を採り入れながら、時間をかけて、開発の底力を積み上げていく。それが柏の葉の未来像をかたちづくり、三井不動産レジデンシャルの伝統を築いていくことなのだろうと考えているのだと。

パークシティ柏の葉キャンパス物語

三井不動産グループはこれまで、「柏の葉スマートシティ」開発の第1ステージとして、「柏の葉キャンパス」駅に隣接した4つの街区を「先行モデルエリア」と位置づけて、街づくりを進めてきた。この先行モデルエリアでは、2014年7月、柏の葉キャンパス駅前の中核地区に「柏の葉ゲートスクエア」がグランドオープン。これによって、住宅、商業、オフィス、ホテルなどの都市機能が集積したスマートシティが本格稼働した。今後は、「柏の葉スマートシティ」のさらなる進化・成長をめざして、周辺エリアの開発に着手し、第2の街づくりに移行していくことになる。これまでの歩みは、柏の葉の地で描かれる壮大な物語の序章に過ぎず、さらに数多くのバトンをつなぎ、物語は、次世代へと語り継がれていくことだろう。