Project Story
プロジェクトストーリー

パークコート神宮北参道 ザ タワー


現代人が羽を休める「巣」となる
タワーが街を変えていく

Profile

岸本 圭佑

都市開発一部
事業室/2018年入社
(※所属部署等、内容は取材当時のものです)

東京の新たなる街、北参道にタワーレジデンスを
都心のほぼ中心に位置し、渋谷・新宿・青山に囲まれながらも穏やかな雰囲気を持つ渋谷区千駄ヶ谷地区。この地の一角は、明治神宮北口への参道を由来に名付けられた駅が誕生してから「北参道」と呼ばれるようになる。ここに、三井不動産レジデンシャルが新たなランドマークとして建てることになったのが、2023年竣工予定の「パークコート神宮北参道 ザ タワー」だ。今回は、その営業を担当した岸本圭佑の声を中心に、どのようにプロジェクトが進み、どんな難しさや喜びがあったのか、そのプロセスを追っていく。

Prologue 忙しい人々へ、緑に囲まれた「巣」を

東京メトロ副都心線「北参道駅」が開業したのは2008年。「千駄ヶ谷」や「表参道」に対して「裏参道」と呼ばれていた街は、「北参道」として知られていくようになった。この土地には元々ビルが存在し、三井不動産グループ全体でその活用方法を検討していた。オフィスビルを建て直すのか、商業施設にするのか。エリア分析を重ねる中で、数ある選択肢から住宅が選ばれた決め手は「緑」だった。というのも、その土地周辺を囲う、明治神宮や新宿御苑といった半永久を約束する「緑」があったからだ。そして、北参道の落ち着いた街並みに高層物件はほとんどなく、緑とともに「青空」が住む人に提供できる可能性もある。しかも、これだけの都心において、駅徒歩1分という好立地。職住近接もかなう。立地の個性は、このくらしを求める人の「像」を自然と浮き彫りにしていった。昼間は都心で忙しく活動し、夜は自然に囲まれたすまいでくつろぎ、自分を解放する。そう、まるで昼間は大空を飛び回る鳥が、夜は森の巣で羽を休めるように。物件コンセプトは「NEST(巣)」。人々へ自然に囲まれた巣をつくるプロジェクトが始動したのは、2019年のことだった。

Episode.1 ランドマークとなるマンションを建てる

「ここにマンションが建ったら、ものすごい存在感になるだろうと思いましたね。明治通りに面していて目の前に北参道交差点。まさに街のランドマークとなる可能性を秘めた場所でした。にもかかわらず、明治神宮や代々木公園、明治神宮外苑、新宿御苑といった緑の存在があり、また街の雰囲気としては穏やかで喧騒を忘れられる。都心ではもう、なかなかないような場所です」 この物件の販売を担当した岸本は、2020年秋に初めて建設予定地を訪れた時のことをそう振り返る。

埼玉県浦和で育った岸本は、自身の成長過程において、街が再開発によって変わっていく様子を目の当たりにしていた。新しいマンションが建ち、電車が複数路線となり、街は便利に。そして、新たに移り住む人々も増え、賑わいも生まれていった。その環境で、家族と過ごす時間はさらに心地のよいものとなった。その実体験から多くの人々に心の拠り所となる場所を届けたいという想いで、2018年三井不動産レジデンシャルに入社する。2つのマンションプロジェクトを立ち上げから引き渡しまでやり遂げ、満を持して入社3年目で本プロジェクトに加わった。当初は先輩と2人だけの少数精鋭部隊。
「販売戦略立案から商品をお客様に届けるといったマンション販売における一通りを経験してきましたが、これほど大きなプロジェクトは初めて。頼れる先輩がいらっしゃいましたが、今までとは少し違う緊張感もありました」

Episode.2 緑と青空と、人々の交流

建設コンセプトである「NEST(巣)」を実現するためには、「緑」と「青空」は必須。となると、マンションとしてはなるべく高さがあるものを目指したい。しかしながら、戸建てや低層マンションが中心の街で受け入れられるのか。容積率や高さ制限といった法律上の制限もある。そして、何より「北参道」にふさわしい建物でありたい。
「ランドマークを目指しながらも、今ある街並みに溶け込めるような『余白』をつくる。それが開発担当の答えでした。たとえば、ベンチのある公開空地を、駅へ抜けられる道を、行政と協力し保育園を、元からいる住民と新たな住民が交流できるカフェとダイニングを。ここで仕事帰りの夕食をとって、街の新旧住民の会話が生まれる。保育園のお迎え帰りに子供も交えてというのもあるかもしれませんね。北参道は元々個人経営のアパレルショップや飲食店が多いんですね。そういった方々同士もつながれる場所にできたらという想いがあります」
岸本も大いに共感したプランだった。当時の北参道には、多種多様な人々が集まり交流できる場所はなかった。その街で、このマンションはランドマークとしてさらなる豊かさをもたらすことができるかもしれない。また、その工夫が建設面での制限も緩和することにつながり、広大な緑を背景に青空へ手が届きそうなタワーの建設を可能にした。
「今回は植樹にも力を入れました。樹種も新宿御苑の木々を参考にして選定。また、1階2階の外壁はすべて壁面緑化するなど、建設コンセプトの着想を得た『緑』と調和したいという思いが込められています」

Episode.3 製販管一体だから込められる想い

建設が進むとともに、建物への愛着が日に日に増していったという岸本。
「じつは図面を見た時はそこまでだったのですが、CGを描き、模型をつくったら、すごく格好良くて(笑)。とくに、CGの制作にはこだわったんです。なるべく緑が多く見えるアングルで描いてほしいと要望したのですが、なぜか開発担当が渋い顔をするんですね。よくよく聞いてみると、そのアングルだと設備の詳細が決まっていない部分も描かなければならないと…。でも、やはり緑は譲れない。なんとかギリギリのところを探って制作してもらいました」
開発も、営業も同時並行で進んでいくプロジェクト。もちろん、開発も営業も、最高最適な物件を作り上げていきたいという想いは一緒だ。しかしながら、それぞれ見解が異なることもある。営業である岸本は、お客様の最前線にいるからこその着眼点があり、それを物件に還元したいと考える。ゆえに、時には意見をぶつけ合いながらの話し合いになることも。
「新築マンション販売の仕事をしていて幸せだと感じるのは、開発側と想いを共有し、それをお客様に伝えられることです。なぜ、このようなデザインなのか。この共有施設を置いた理由や部屋の広さについても納得ゆくまで議論します。その中にはもちろん営業側からの要望もある。今回も、部屋の広さや駐車場台数などで話し合いました。やはり最もお客様の声を聞いているのは私たちなので、伝えるべきことは伝えます。むしろ開発側も聞きたいと言ってくれるんです。当社は製版管一体なので、密にコミュニケーションできる環境があり、またお互いをリスペクトして仕事をしている人が多いですね。でも、近頃、お客様の最も近くにいる営業担当であっても、ニーズを的確にキャッチすることは簡単ではないと痛感することがありました」

Episode.4 予期せぬことも起こる時代のニーズ

販売時はまさにコロナ禍。それにもかかわらず、連日、販売開始から10分足らずでモデルルームの予約が埋まってしまうほどの反響だったという。
「都心では珍しい立地の物件だったため、注目度が高かったようです。感染対策という面で通常と異なる苦労もありましたが、多くのお客様にこのマンションの想いを伝えられました。一方で、時代の変化の速さに圧倒されたことも。新型コロナウイルスの影響からテレワークが急増。広いお部屋、もしくは個室を求められるお客様が増えました。しかしながら、すでに図面は書き上がっている。幸い、テレワークができるラウンジのご用意はあったのですが、この大きな日常の変化には驚かされました。他にも、この物件だけに限りませんが、電気自動車への早急な対応の必要性を感じさせるお話もありました。変化が速く、予期せぬことも起こる時代では、お客様のニーズの少し先を見据えていく必要がある。そして、その最前線に立つのが、営業担当。改めて、自分の役割の大きさも実感しました」
お客様の最も側にいるがゆえに感じられるリアルな課題。だからこそ、今後への想いもあるようだ。
「お客様や社会にどのような企画が受け入れられるのか、受け入れられないのか。シビアな面も含めて学んできました。いつかは、それを開発側として生かしていきたいと考えています」

Epilogue 神聖な空気を取り込み、街に新たな風を

今、北参道の駅を降りると曲線的なフォルムが印象的な建設中のタワーを見上げられる。
「販売中に、地元の方々がモデルルームに足を運んでくださることがありました。『どんなマンションができるの?』と聞いてくださり、街の人々が交流できるランドマークとしたいことをお伝えしました。喜んで受け入れてくださる方々が多く、非常にうれしかったですね」
2023年の初夏に完成するこのマンションへの想いを、改めて岸本に聞いた。
「このプロジェクトに携わることが決まった時、明治神宮の北参道を実際に歩いてみたんです。木々が豊かに生い茂っていて、そこから発せられる空気が気持ちよく、神聖な気持ちになりました。このパワーをいただきながら、街に新たな風を吹かせるマンションになってほしい。北参道ってオシャレだけど落ち着いていて、いい街なんだよっていう声を聞けたらいいですね」

パークコート神宮北参道 ザ タワー物語

近年、注目の町「北参道」。その街に2023年初夏、地上27階全471戸のタワーレジデンスが竣工予定。高さ99.01mを誇りながらも、都市と自然に溶け合うような柔らかいフォルムが印象的なマンションは、建築家・星野裕明氏による「編む」というコンセプトのもと建てられた。明治神宮、新宿御苑、明治神宮外苑という3つの大公園を望める屋上や上階には、フィーリングデッキやカフェ、ダイニングコーナーがあり、街の新旧住民の交流の場となることを想定。ラウンジやジム、スポーツバイク専用のレンタサイクルも設置されており、多様なライフスタイルも提案している。まさに、鳥たちが行き来し、集い、そして夜は羽を休める、森のような場所となるように。「経年優化」の思想のもと北参道の街に馴染むように細部まで設計されたタワーレジデンスは、やがてこの地のランドマークとして存在感を放っていくことだろう。