Project Story
プロジェクトストーリー

パークシティ南千里丘


人と人とがつながり、
交流する未来発想の街づくりを推進。

阪急京都線の新駅「摂津市」駅前において、「低炭素型社会の実現」をテーマとする複合開発「南千里丘まちづくり事業」が、総開発面積6.8haという規模で進められてきた。2008年、三井不動産レジデンシャルは、このまちづくり事業の住宅街区として計画されていた用地を取得。「パークシティ南千里丘」として分譲マンションの開発を進めていくことになる。エネルギーモニタリングシステムの導入、25%を超える緑化率の達成など、当該エリアの全体計画に基づく開発条件を満たしながら、いかに魅力ある街づくりを進めるか。この課題に挑んだ、開発担当者たちが情熱を注いだ日々を追う。

Prologue マンションのスマート化プロセスの先駆け

三井不動産グループが実践してきた、街の成熟とともにその価値を増す「経年優化」の街づくり。この理念に基づき、三井不動産レジデンシャルでは、マンションに求められる環境負荷の低減や防災面の課題に対応しながら、スマート化のプロセスを加速してきた。2008年に動き出した「パークシティ南千里丘」は、その先駆けとなったプロジェクトの一つだったと、担当者は当時を振り返る。
「低炭素型社会の実現という全体計画のコンセプトを受け、それを具体的な施設計画に落とし込んでいく過程で、私たちは同時期に各エリアでマンションのスマート化に取り込んでいた他のプロジェクトと連携しながら進めていきました」
また、事業地周辺は良好な住宅街ではあったが、大規模マンションの供給実績はなく、また当該地は大規模工場跡地で、暮らすイメージのしづらいエリアであった。ここに総戸数586戸のマンションを供給する今回のプロジェクトでは、新駅が生まれ、駅前が整備されていくことに対する期待感や、新しい街づくりによって認知度を向上させ、新たな需要を創造することが大命題となった。

Episode.1 人が、つながる街づくり

新たな需要を創造し、このプロジェクトを成功に導くために、担当者たちは、「低炭素型社会の実現」という街づくりのコンセプトを、どのように住宅のコンセプトへと落とし込んでいくべきかを検討していく。このプロジェクトに注目し、この街で暮らしたいと思っていただくために、どのような提案が求められているのか。自社における過去の成功事例や、最先端の取り組みに学びながら、このプロジェクトならではの答えを探した。 
「低炭素型社会の実現、CO2排出量の削減というテーマは、これからの街づくりを考えていくときに、避けては通れない大切なものだと思いました。でも、それをそのまま言葉にしても、誰も楽しいとは感じてくれないだろうと。楽しみながら快適に、毎日を過ごしていただく。その延長線上に、街ごとECOなくらしが広がっていく。そんな提案にしたかったのです」 
たどり着いたのは、人と人とがつながるコミュニティを核とする新しい街づくりをめざす「クラブシティ構想」だった。この街で暮らす人たちが、互いに触れあい、交流できるような場を設けること。さらにその運営にまで踏み込んだ提案とすることで、街としての魅力を増していけるのではないかと考えたという。

「多くの住民が、自発的に楽しみながら、自然につながりを深めていくきっかけとして、全住民参加型のクラブ組織を立ち上げようと考えました。住民のみなさんが主役となって活動を続けていくうちに、環境に対する意識が自然に芽生えていくような組織にしたい。そのために、施設(ハード)としくみ(ソフト)の両面を整備していく必要があると考えました」 
コミュニティの交流を活性化させるために、担当者が用意したのが「空の里庭」や「多目的アリーナ」などの共用施設だ。「空の里庭」は、駐車場棟の屋上を利用した屋上菜園であり、菜園活動を通じて、世代を超えた交流が生まれることを期待した。また「多目的アリーナ」では、スポーツを楽しむこと以外にも、組織されるサークルなどの活動拠点として、多目的な利用ができるように配慮した。こうしたコミュニティの成熟による住民相互の交流により、お互いが顔見知りになることは、万が一の時に助け合える関係を築き、防災面でも大きな安心を生むと考えている。

Episode.2 エコロジーを見える化する

「南千里丘まちづくり事業」では、太陽光発電をはじめとする最先端のエコロジー技術の導入と合わせて、エネルギーモニタリングシステムの導入が求められた。この要請に応えるために、機器メーカーを巻き込んで協議を重ねていく。この結果、「新ECOマネシステム」を国内マンションとしてはじめて採用することになった。このシステムによって各住戸に設置されることになった「エネルギー見える化モニター」は、各家庭の電気・ガス・水道の使用量、CO2排出量をリアルタイムで表示し、日々の省エネ行動の効果が、ひと目で実感できるシステムとなっている。
「各エネルギーの使用量を把握するだけならさまざまなシステムがありました。この機器を導入しようと決めたのは、モニターを家庭の中心であるリビングに設置することで、簡単に「見える化」することができたからです。親子の会話のきっかけになったり、住民同士で比べあったり。エコロジーなくらしの気づきになるようなシーンをイメージしました」
敷地内の緑地も、ただ単に緑化率25%をクリアするためだけのものではなく、8つのテーマを設け、春には花見をし、秋には落ち葉を踏み、みんなで育てた野菜を収穫することで、季節の移ろいを感じ、自然の豊かさや、くらしの楽しさを感じられるものとした。
「この街に来て、みんなとつながる生活をしてみると、それが自分たちにとって快適で、自然に環境にもやさしいくらしになっていた。そういう街づくりをしたいと考えていました。それぞれの取り組みが『低炭素型社会の実現』という大きなテーマの答えになればいいなと考えたのです」

Epilogue コミュニティを育むための施設計画

このプロジェクトのなかで、大切にした想いとは「ただ箱をつくって、終わりにするのはやめよう」ということだった。畑をつくって、好きな人が趣味の家庭菜園を楽しんでくださいというのではなく、クラブ運営を通じて、みんなが一緒に参加することをめざして施設を考えていく。コミュニティを創造する仕掛けと一緒に施設を考えることを重視したという。
「たとえばお子さんが二人いらっしゃる家庭を想像します。上の子が多目的アリーナで思い切り体を動かして楽しんでいるとき、まだ小さい下の子はキッズルームを使うだろうと考えられる。だから二つの施設は隣接して計画しました。さらに、その時に母親はどうしているだろうと考えると、同じように施設を利用する子供たちに付き添ってきた母親同士で会話を弾ませている姿が浮かんできます。そこで両方の施設に目が届くところにはラウンジがあったらいいなと気づくのです。そういうストーリーを大切に企画することを心がけました」
担当者たちがめざした「コミュニティを核とする新しい街づくり」を体感してもらうために、入居前から、地元行政やNPO、大学、街づくりに関わる事業者を巻き込んで「エコイクプロジェクト」を立ち上げ、菜園活動の体験や、ペットボトルを再利用したキャンドルイルミネーションなどのイベントを企画、実行してきた。、竣工後も、新しい街でさまざまなイベントが継続的に開催されており、このマンションだけでなく、地域のコミュニティの輪が広がっている。
「関西を離れてからも、菜園活動の状況などを耳にし、子供たちが多目的アリーナを元気に走り回っている写真を見ると、とても嬉しくなりますね。自分の想像したことが徐々にかたちになっていく手応えが感じられます。竣工時よりも、10年、15年と経ったときに、この街に暮らす人たちの表情が、さらに輝いていることを期待して事業推進しました。この先も、まだまだ楽しみですね」

パークシティ南千里丘物語

「パークシティ南千里丘」は、摂津市南千里丘地区において阪急電鉄京都線の新駅設置と新駅の駅前に展開する「南千里まちづくり事業」と一体となって進められたプロジェクトである。電気、ガス、水道の使用量、CO2排出量を表示する「新ECOマネシステム」を国内マンションとしては初めて採用。さらに太陽光発電システムを導入し、共用部電力として使用するほか、エコカーによるカーシェアリングシステムも導入している。テーマの異なる8つの庭園を備え、屋上緑化、壁面緑化など、緑豊かな住環境を創出している。 また入居者の交流を支えるコミュニティ組織を立ち上げ、交流の場となる「屋上菜園」や「多目的アリーナ」など、多彩な共用施設を備えている。子育て世代を中心とする幅広い層に訴える多彩な仕掛けを用意し、居住者のライフスタイルを想定したストーリー性のある企画がふんだんに盛り込まれたプロジェクトであり、歳月を重ねても色褪せることのない「経年優化」の設計思想と、人と人とのつながりや交流を重視し、コミュニティの成熟を促す「クラブシティ構想」によって、時の流れと共にその魅力を増し、将来にわたって輝き続ける街となっている。