担当者の想いvol.1
くらしを豊かにする“ガーデン”をつくる。緑の仕掛け人「グリーンチーム」とは

担当者のプロフィール

品質企画部クオリティマネジメント室【※取材当時】
専門役 植栽担当 木村紀(左)・星野忠彦(右)

開発担当者・デザイナーがプランニングした植栽計画に対して植栽専門家の立場からアドバイスを行なう。

日々を忙しく過ごす人々にとって、緑に癒されることも多いのではないでしょうか。近年、オフィスの中に緑を取り入れる「グリーンアメニティ」が生産性の向上につながることが発表されるなど、緑の効果には一層注目が集まっています。
人を癒し、日々のくらしを豊かにする緑に着目し、約20年前から取り組みを行なっているチームがあります。今回は三井不動産レジデンシャルで植栽の品質管理を行なう「グリーンチーム」にマンションの植栽の重要性について話を聞きました。
開発担当者でもデザイナーでもない「グリーンチーム」が果たす役割とは

チーム発足時に掲げたのは「60点作戦」

品質企画部クオリティマネジメント室・植栽担当の木村と星野は「グリーンチーム」として、マンションの開発担当者やデザイナーから提案のあった植栽計画のアドバイスや、実際に植える樹木の選定、植樹後の検査まで、植栽の専門家の立場からすまいづくりに関わっています。

そもそも「グリーンチーム」が発足したきっかけは1990年代にまでさかのぼります。当時の分譲マンションはコスト競争が激しくなり、効率性を重視した無機質なマンションが多くなっていました。住む方々のくらしを考えたとき、当時さほど優先度が高くなかった「植栽」にフォーカスし、誕生したのが「グリーンチーム」です。

チーム設立当時は、「エントランス」「駐車場や自転車置き場」「エントランスからマンションまでの動線」「建物の足元」の場所に緑を設ける4点セットを実施。まずは植栽の専門家としての合格点を目指そうと、「60点作戦」と銘打って取り組んでいました。発足から22年、今では知見がたまり更なる質の向上を図ることができるようになりました。単なる「緑化」ではなく、「ガーデン=空間を作る」という方針にも変更し、進化を続けています。

「ガーデン=空間を作る」方針のもと描かれたイラスト

住人と地域の方に喜んでもらえる「ガーデン」づくりを目指すということ

「緑を植えるだけでは『緑化』にすぎません。我々は『ガーデン』を作ることを考えています。この違いは、心があるかないかだと思っています。具体的には、仕事をする上で設計者をはじめ、実際に住む方々や近隣にお住いの方々の心を汲み取ることです」と木村はその想いを語ります。

植栽ガイドラインを定め、どんなマンションにも同じように採用できる植物を調達する会社もあります。しかし、三井不動産レジデンシャルはあえて、そうしたガイドラインを作らず、開発担当者の想いを尊重しています。昔から、色々なものがあって然るべきだし、それぞれの場所に合うふさわしいものがあると考えているからです。

続けて、「マンションに住む方は、緑が好きな方ばかりではありません。お住まいになるより多くの方々に満足していただくことを意識しています」と、マンションならではの配慮が必要であることを教えてくれました。

「三井にやってもらって良かった」と言われたらいいね、と微笑む二人

また、近隣にお住まいの方への影響も考慮する必要があるといいます。「以前からお住まいの方にも『三井にやってもらって良かった』と思っていただきたいので、ブロック塀に替えて緑を植えることで安らげる景観を実現するなど、従来以上の付加価値を提供することを心掛けています」と、木村は近隣の方への想いを語ります。

人の都合に合った木だけでなく、木の個性を生かす

実際に建設していく段階では、畑に行き、ふさわしい樹木を探す「材料検査」をします。

星野は「材料検査では、元気な木かどうかはもちろんチェックしますが、姿かたちまで完璧なものばかりを選ぶわけではありません。一見不恰好な木でも、反対から見ると綺麗なものもあります。植える場所にふさわしい木を選ぶようにと、経験が浅い開発担当者にアドバイスしています」と、採用する樹木の選び方を説明します。

「姿かたちの完璧な木ばかりを採用して、植える時に場所に合わせて不要な枝を切ってしまうようなやり方は植物にも悪いと思います。また、売れ残った樹木は処分される運命にあるので、うまく生かせる場所はないかと考えています」と木の個性を生かすことも考えて植栽に携わっている星野。植物への愛情が伝わってきます。

その後に、現場で植え付けられた植栽を確認し、深く植えすぎていないか、植物の表裏が正しいか、住む方が生活する上で支障がないか、などを確認し、適正な状態にする「竣工検査」をするとのこと。

植樹後10年程度であればその植栽がどう変化していくか予測できるそうですが、50年後に同じ樹木が生育しているかは、さまざまな事情も起こりうるので、なかなか見通せるものではありません。そこで、後継の樹木を植えるなどして、次の世代でも同じ景観を保てるようにと取り組んでいます。

パークコート鎌倉(分譲済み)

年月を経て変化していく植栽に込めた想い

人々のくらしのワンシーンとなり、時を経るほどに感動を与える

「20代の頃に手がけた物件を今見ると自分では稚拙と感じる部分があるのですが、その物件に住んでいる友人から『緑がすごく気に入っている』と言われて、とても嬉しかったです。他にも、担当した物件がマンガやテレビドラマ、CMで使われていたりすることがあり、時を経ても人の気持ちを動かしていると感じられて嬉しいですね」と嬉しそうに語る木村。

星野は、「設計時に悩みながらも、既存の桜の木を残した物件があります。竣工後、ちょうど開花の時期だったのですが、お住まいの方がお子さんと記念撮影をしていたんです。その光景を見て『残して良かったね』と開発担当者と一緒に喜びました」と、お住まいの方のくらしのワンシーンを手がけられたことにやりがいを感じていると言います。

「また、マンション建設に当たって残した緑をマンションの住民と近隣の住民とが一緒になって維持管理する活動をし、時にはお酒の席を共にする機会もあると、入居者の方からお聞きしたこともあります。マンションができたことで緑が豊かになり、地域の環境価値も上がったというお声もいただきました」

人に感動を与え、くらしを豊かにするだけでなく、人と人のきずなを生むなど、植栽には大切な役割があると考えています。

サンシティ(分譲済み)

理想はいつも綺麗な自然な景観

「グリーンチーム」の今後の目標は、設計時の想いを、管理する方やお住まいの方に伝え、意図した景観を維持し成長させていくこと。

床屋の調髪に例えて「髪を切ったのがわかる人と、いつ切ったかわからないが常に整っているという人がいますよね。私たちが目指すのは、後者のそうした常に綺麗な植栽なんです」と木村が理想とする姿を教えてくれました。

三井不動産レジデンシャルでは、10年、20年後といった時間の経過とともに価値を高めていくことを目指す「経年優化」という理念があります。すまいの完成をゴールとするのではなく、そこに住まう人々のくらしを豊かにしていくことを目指す。何気なく目にしている緑には、こうした想いが込められています。物件を選ぶ際には、ぜひともそうした点にも注目してみてください。

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